深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 函館丸井今井 橋淳央社長

2022年05月12日 12時00分

橋淳央社長

新時代見据えた店舗を

 丸井今井函館店が4月25日に開業130周年を迎えた。インターネットショッピングの普及やコロナ禍など百貨店を取り巻く環境が大きく変化する中、函館丸井今井の橋淳央社長(57)に考えを聞いた。

 ―百貨店事業にどのような未来を描くか。

 コロナ禍で赤字になったが、130周年を契機に単体の店舗として黒字を目指す。函館には商業的な伸びしろがまだまだある。函館にいては買えない商品が多く、高感度の顧客は札幌に足を運んだり、インターネットで商品を購入している。これでは時間のほか、送料や交通費など金銭的な負担もかかる。

 当店は、新宿伊勢丹や日本橋三越で扱う話題の店舗などが出店するポップアップストア(期間限定店)に活路を見いだす。買い物に関する負担がなくても、当店で珍しい商品の購入や体験ができれば足を運ぶ顧客は増えるはずだ。

 この方向性への手応えは感じている。生ハムやチーズなど普段扱っていないブランドを出店したところ、1週間で1500万円ほどを売り上げ、メインの来客層ではなかったZ世代、ミレニアル世代の複数回利用も多かった。

 ―今後の課題は。

 アフターコロナを見据え、インバウンドへの対応が検討材料になる。当店は、インバウンドによる売り上げ割合がコロナ禍前から1%ほどにとどまる。市内にはほかに観光エリアがあるため、メインターゲットから外れていたからだ。調べてみると、近隣店舗ではインバウンドによる売り上げの割合が1割ほどの店舗もある。当社としても5%程度を目指し、新たなアプローチを考える。

 テナントなどの誘致も課題だ。さまざまな購買ニーズが眠っていることは取引先などから聞いているが、札幌に店舗を構えるブランドはテナント料高騰などで函館への多店舗展開が厳しい状況にある。

 ―店舗の考え方について。

 デパートの在り方が変わってきている。昔は商品知識豊富なプロが店頭に立ち、百貨と呼ばれる新しかったり、珍しい商品が置いてあった。一方、現代は知識がインターネットでも得られるし、商品も豊富にある。新しい存在意義を考えなければならない。夏ごろには店舗7階にマイナンバーカード申請・交付に関する市の出先を設置する。当店の顧客は高齢者が多く、その層を含めたマイナンバーカードの申請・交付が進んでいないという地域課題に寄与できる。6月には改装に取り掛かる予定だ。

 ―函館市や五稜郭エリアをどう見るか。

 五稜郭エリアは函館市内で消費の中心地だ。商業施設があり、企業誘致につながるような労働環境もあれば良い。今のところ、公立はこだて未来大など優秀な人材が育つ街ではあるものの、働く場所が少なく、Z世代やミレニアル世代が張り付きにくい環境だ。

 函館にはブランド力があり、黙っていてもある程度人が来てくれる。エリアが持つポテンシャルだけでなく、新しい街の魅力づくりについて長期のビジョンを組み立て、行政と企業が一緒に取り組む必要があると感じる。

 (聞き手 宮崎嵩大、鈴木楽)

橋淳央社長(はし・あつひさ)1964年生まれ、東京都出身。慶大法学部卒業後、87年に伊勢丹入社。伊勢丹松戸店店長や三越伊勢丹プロパティデザイン社長などを担い、21年4月から現職。

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