「木組みの家」道内普及に熱意
足寄町中心部に「はたらくものづくり村」を構える木村建設(本社・足寄)は、地元の木材を使った家屋に起業を夢見る人材を受け入れ、移住者による地元商工業の発展に取り組む。木村祥悟社長は「地域材を使った家づくりや自社ブランドのPR、担い手確保が発想の原点」と話す。日本の伝統工法と現代技術を融合させた「木組みの家」の道内普及にも力を注ぐ。
同社は1966年に創業。足寄町を中心に一般住宅や公共建築に携わってきた。2016年に就任した木村社長は3代目。京都で宮大工の修行を積んだ経験を持ち、道内に伝統工法の家づくりを広げたいとの思いを抱く。「伝統工法は本州でもわずかな工務店しかできず、途絶えようとしている。だが日本の伝統と現代の断熱技術を掛け合わせると、寒冷地にも対応した世界に誇る良質な家ができる」と説く。
そこから生まれたのが自社ブランド「木組みの家」だ。くぎや金物に頼らず、カラマツなどの地域材を組み上げ、高い耐久性を実現。化学塗料を使わないため、室内には心地よい木の香りが漂う。
木村社長は「地域や不特定多数の人が使い、喜んでもらう場所にすると、工法だけでなく建物の価値も創造できる」と考える。19年に誕生したはたらくものづくり村(南1条4丁目30)は、そんな思いから始まった。
手に職を持ち、ものづくりで起業を夢見る移住者をターゲットにし、滞在拠点と町民との交流の場を用意することで移住しやすい環境を整えた。
ものづくり村は、木組みの家を使った「かってば」「ながや」「おもや」の3棟で構成。「かってば」はレンタルスペースで、週に数回、衣食住をテーマにしたイベントや文化教室を開催。移住者と地域住民が交わる空間として町内外から広く利用されている。
「ながや」は3部屋の寝室と共用スペースからなるシェアハウス。1棟貸しの「おもや」は1LDKの居住空間とアトリエを配置した。移住希望者の受け入れはもちろん、空室時は木組みの家のモデルハウスとしても使い、集客につなげている。
いずれも設計はアトリエフアリ(本社・札幌)、施工は木村建設が担当。移住者目線を意識した空間づくりと地域貢献から、19年度にはグッドデザイン賞を受賞した。
人材も着実に根付いている。昨年、札幌から移住した夫婦は、毎週日曜に「かってば」で間借りカフェを開き、近く町内で夢だったコーヒー店を開業。今後は温泉熱を使ったコーヒー豆栽培に取り組む考えだ。
ものづくり村と自社の将来について木村社長は「人口減少で受注が減る中、これからの建設業は自ら仕事を作り出すべき。起業した人の店舗や家づくりはわれわれの仕事につながる」と見据える。