新型コロナ感染拡大は第6波が収束の方向となりました。ワクチン接種が広まったことと相まって、少しずつ社会的な規制は解除されました。学校では運動会の開催が復活し、一般のスポーツ施設の使用制限がなくなり、スポーツジムも再開されました。さらに、市民のスポーツ大会も徐々に再開され、コロナ禍による自粛でなまった体を鍛え直すチャンスが来ました。
それまで、あまり運動していなかった人が、運動会などのイベントに急きょ参加すると、運動後に筋肉痛にさいなまれます。発生頻度がかなり高く、ほとんどの人が経験したことがあるトラブルでしょう。筋肉痛はなぜ起こるのでしょうか。
昔は、運動によって生じる乳酸が筋肉内にたまって、神経を刺激して痛みを引き起こすのだと思われていましたが、現在の科学では完全に否定されています。乳酸は運動中に疲労する筋肉に、効果的にエネルギーを補給するために生じる物質であることが分かったからで、実際、乳酸は痛みを生じさせません。
筋肉痛の原因は、けがとは言えない程度の小さな損傷が筋肉に起こった場合、これを修復するための反応が筋肉内で起こります。実は、これを炎症というのですが、この小さな炎症が起こると、炎症に関連した物質が生じて神経を刺激するようになります。
こうして筋肉痛を感じるわけですが、この筋肉痛は、修復のための炎症反応が終わるまで続きます。炎症を止める消炎鎮痛剤の湿布などを使うと、痛みは和らぎますが、修復反応も止まるので、回復が遅れる恐れがあります。痛みをなるべく小さくして、修復を早めるには、別な方法が適しています。
それは、筋肉への血流を良くすることです。そうすると修復に必要なタンパク質や糖分、酸素などが大量に供給されるので、修復が早くなり、痛みが取れやすくなります。
一番効果的なのは、運動後なるべく早く、お風呂に入ることです。全身浴で5分以上湯船に漬かり続けるのがこつで、こうすると、筋肉への血流が増加します。血流を低下させる作用がある冷却はお勧めしません。
血流を改善する筋肉のストレッチを運動直後に行います。曲げ伸ばしでなく、伸ばしたまま30秒保持すると、そのあと反動で血流が大きくなります。さらに、運動後に止まらないで、ウオーキングなどを軽くすると、血流が維持され筋肉痛になりにくいといわれます。お試しあれ。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)