冬にピークとなったコロナ感染拡大第6波は、その後徐々に感染者数が減少していきました。しかし、十分に減少しきる前の3月に増加に転じ、ゴールデンウイークごろに再びピークとなりました。その後、減少したのですが、6月の下旬に底を打ち、全国的に再拡大の傾向を示し始めました。北海道の感染者数も先週前半から再び増加しています。7月には一段落して収束すると考えていましたが、どうもそうはいかないようです。なぜ、再び感染拡大の傾向になったのか考えてみました。
一つ注目すべきは、3回目のワクチン接種完了が道内で人口の60数パーセントにとどまっていることです。まだ、3回目を接種していない人の中で、2回目の接種を完了した人の免疫力が下がってしまったと思われます。2回目の接種はほぼ昨年に完了しているはずで、それから少なくとも半年以上の時間が経過しているからです。
もう一つは若年層、つまり、10歳以下、10歳代、20歳代のワクチン接種があまり進んでおらず、依然として若年層の感染者が大半を占めているという事実です。
また、6月は猛暑に見舞われ、冷房のために室内の換気がおろそかになっている傾向があると考えられます。再び感染拡大へ転じた主な理由はこの3つと考えています。
これまで感染拡大は、新たな感染力の強い変異種の出現により引き起こされてきましたが、今回の感染拡大を新たな変異種であるBA5の出現のためと考えるのは、早計だと思います。
というのは、まだBA5は感染者数の数パーセントに満たない程度であり、現在の増加の理由にするには少なすぎるからです。ただ、BA5の感染力は、現在蔓延(まんえん)しているBA2より1.2倍程度強いようなので、今後の感染拡大を後押しする危険性は高いと思われます。
コロナ再拡大に当たっての対策ですが、まず、まだワクチン接種を完了していない人は、なるべく早く接種を進めてほしいです。さらに、夏は冷房を使うことが多くなりますが、冷房の効率を考えると、外気を入れることにためらいがあると思います。しかし、感染対策として、換気は小まめに行われなければなりません。多数の人がいる室内でのマスクの着用も必要でしょう。暑い夏になりますが、感染対策の継続をお願いします。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)