災害と同様、健康にも備え
先日、歯科医院に通院した際、担当の歯科医師が体調不良とのことで、代わりの歯科医師が当日の担当となりました。カルテと歯科衛生士の存在により、その日の歯科診療はつつがなく終了しました。
東日本大震災により、事業継続計画いわゆるBCPの策定の重要性が注目されました。事業継続計画とは「災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略」(内閣府)です。事業体にて、緊急事態に備えて準備しておくことで、突発的な危機から自分を守ろうとする考え方です。経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)な企業ではBCPを策定することで廃業を回避することもできます。
企業がBCPを策定するために中小企業庁から専門家の派遣を受けることができたり、策定したBCPについて認定を受けると税制優遇や金融支援、補助金の加点などの支援が受けられることに加え、北海道の競争入札参加資格審査においても加点対象であったりとBCP策定を後押しする制度も多いです。
BCPはその対象を「災害時」に限定していることが多いです。地震、風水害といった自然災害やテロ、火災などの人為的災害が起きることを想定し、その対応方法について検討します。近年は今までの対象に加え感染症対策も含まれることでしょう。
ところで、事業が中断するおそれのある脅威とは、災害などの外からの脅威に限られません。冒頭の歯医者の例では、私は診療を十分に受けることができました。しかし、歯科医師が一人しかいない歯科医院ではどうだったでしょうか。
実は先日、同業者の一人が体調を崩し入院しました。その事務所は従業員も二人いましたが、資格が必要な事業であることも相まって、事業は中断しました。
たまたま入院前日に電話をした私に白羽の矢が立ち、彼女の入院中、その事務所の運営を一時的に引き受けることとなりました。顧客対応や官公署とのやりとりも含めた業務全般から、既存顧客との債権管理、従業員の雇用まですべてを対応。お客様に業務の進捗状況を聞いたり、入院前に業務を紹介してくれた方に状況を相談したりと、従業員や彼女の依頼している税理士、お客様にも手伝ってもらい、何とか入院期間中の事務所維持を切り抜けることができました。
行政書士に限らず、事業者にとって、健康が何より大切です。しかし、いつも健康を維持できるとは限りません。災害と同様に経営者の健康にも備え、人員面などでバックアップ体制を整え、カルテのように業務状況を明らかにしておくことが、あらゆる状況で事業を継続するためには重要だと学びました。