日常の食事において中心となり、毎日のように食べる食材のことを主食と呼びます。言うまでもなく日本では米(ご飯)です。世界を見回せば、小麦、大麦、トウモロコシ、ジャガイモ、豆類などを主食としています。小麦などはパンや麺類にして、それを主食としている国もあります。さらに、魚や肉が主食であるという国もあります。
しかし、主食という概念は日本特有の考え方のようです。日本では、まず、ご飯ありきで、それにどの料理を一緒に食べるか、という考え方です。しかし、西洋ではパンが主食になるのですが、決してメイン料理とはなっていません。料理の付け合わせ、添え物のイメージです。
アメリカでは、日常ではハンバーガーやサンドイッチを食べることが多いのですが、かといって、パンを中心で食べているという意識はあまりないように見受けられました。パンは手に持って食べるための土台のようなイメージでした。
日本で、米は通貨の代わりに使われていて、武士の給料も米で支払われていたぐらいですから、米は貴重で大切なものという意識が根付いています。だから、毎日、毎食、ご飯を食べる人が多く、食事のことを「ご飯」と呼んだりするのです。主食という概念はこうしてつくられたのでしょう。
世界の主食となる食材の中で、米は重量当たりのカロリーがずばぬけて高く、糖質の含有量も群を抜いています。古い言い方ですが、栄養価が高い食材といえます。ご飯を中心にして、少しのおかずと組み合わせても、必要なカロリーを取ることができます。
しかし、ご飯が多めになると、簡単に必要カロリーをオーバーしてしまい、これを続けると肥満となり、いろいろな生活習慣病の原因となるのです。かといって、ご飯を減らしすぎると糖質が不足して、脳の働きに影響が出るという報告もあります。ご飯を適量食べるということは難しいものです。
他の国の主食であるパンやパスタなどでもご飯と同じことがいえます。主食はその国の人たちが慣れ親しんでいる食べ物なので、ついつい取りすぎとなりやすく、生活習慣病に結び付くことから、逆に悪玉のように見られることが多いのです。
健康診断で引っ掛かって、主食を減らして我慢している人も多いと思います。主食ばかり減らすのではなく、食事全体を見直すことが大事ですね。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)