コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 287

慈善コンサート

2017年06月02日 09時21分

 米国の歌手アリアナ・グランデさんは、その飛び抜けた歌唱力と華やかさからマライア・キャリーの再来とも呼ばれているそうだ。そういえばうちの娘もよく聴いているな―と思い出す人も多いのでないか

 ▼実質的なデビュー曲は2013年発表の「ザ・ウェイ」。この中で彼女はこんな趣旨のことを歌っていた。「あなたが望むなら、私は毎日でもそうする。いつもあなたのそばにいる。決して離れることはない」。きっとアリアナさんは今も、そんな心境にあるのではないか。5月22日に発生した自爆テロで犠牲になった人々らのための慈善コンサートを4日、現地マンチェスターで開くことに決めたという。英BBCニュースが伝えていた

 ▼自身のコンサート終了直後に起こったテロである。子どもや若い女性を中心に22人もの犠牲者が出た。それだけに驚きや悲しみはひとしおだったろう。恐怖感も小さくなかったはず。なのにテロには屈せず、現地に戻って多くの人と思いを分かち合おうというのである。彼女の勇気をたたえたい。慈善コンサートの題名は「ワン・ラブ・マンチェスター」。アリアナさんに共感し、カナダのジャスティン・ビーバーさんや米国のケイティー・ペリーさん、英国のコールドプレイらも顔をそろえるそうだ

 ▼収益は全て、マンチェスター市と英赤十字が設立した緊急基金に寄付されるという。心配なのは再度のテロ攻撃。関係者は万全を期していよう。何事もなければいいのだが。音楽の力で自由と平和を守る。アリアナさんの願いが無事かなうことを祈るばかりだ。


うんこ漢字ドリル

2017年06月01日 09時34分

 近頃、小学生の間で大流行しているものの一つに、『うんこ漢字ドリル』(文響社)なるものがあると知り手に取ってみた

 ▼もし朝食時に小欄を読んでいるのであれば、心の準備をしておいていただければ幸いである。書名だけ見て不真面目な内容かと思ったら、これが大間違い。言うと子どもたちが無条件に喜ぶ「うんこ」という言葉を全例文に使い、漢字の読み書きを楽しく学べるよう工夫したドリルなのである。何はともあれ、6年生版の例文を幾つか紹介したい。かっこ内が問題である。実際には回答欄も全て「うんこ」の形をしている。まずは読み問題。「自(己)しょうかい代わりにうんこをさせていただきます」「父の会社に、急いでうんこを(届)ける」

 ▼読者のため息が聞こえそうだが次に書き問題。「(ぜん)悪はさておいて、うんこが出てしまった」「きょ大なうんこを運ぶため、トンネルの(かく)張工事をする」。まさに型破りである。ただこれなら確かに難しい漢字も覚えられそうだ。文響社は「笑顔で机に向かう子どもたちが増えてほしい」との願いを込めてこのドリルを作ったという。子どもたちは熱狂的に支持し、発行から2カ月でシリーズ累計180万部の大ヒット。低迷著しい出版業界には干天の慈雨となった

 ▼やはり支持率低迷著しい民進党も、ドリルに学ぶところ大かもしれない。最近は森友、加計、便宜、忖度(そんたく)とこちらもいろいろ漢字を並べて政権攻撃の大ヒットを狙っているが空振り続き。「うん」も大切だが何より国民の心をつかむ工夫がいる。


ビール安売り規制強化

2017年05月31日 09時08分

 明治から昭和前期にかけて、文学者と酒は分かち難い関係で飲み方も豪快な人が多かったらしい。小説家の火野葦平もご多分に漏れず、中でも無類のビール好きとして名が通っていたそうだ

 ▼愛好する気持ちが高じて、「ビールの歌」まで作ってしまったくらい。一部を紹介すると、「ビールこそよろしきものか白き泡/かみつつあれば世界はいらず」「ビールびん百ダースほどならべおき/将軍のごと閲兵をする」。これはわが心の内を歌っているのでは、と思われた人も少なくないのでないか。当方もその一人である。汗をかいた後に飲む、あの冷たいビールといったら。ところでそのビールの気が抜けてしまうような無粋な話題で恐縮だが、あすからついに酒の安売り規制強化が始まる

 ▼酒税法の改正により、過度な安売りをすると酒類免許取り消しも含む厳しい処分を受けることになるそうだ。ビール会社や卸の販売奨励金で安売りの目玉づくりをしてきたスーパーなど量販店にとっては相当な痛手だろう。もちろん懐の寂しい一消費者にとっても値上げはつらい。葦平と違いビールを100ダース並べて閲兵することはないにせよである。最近は消費税が8%のせいもあり、ちょっと買い物をしたつもりでもすぐ目を見張る金額になる

 ▼どうやらビールも気軽には買い物籠に放り込めなくなりそうだ。仕方がない、これを機にビールはあまり飲まないことにしようか。「前言をはや撤回やビール干す」橘夫仁子。暑くなる6月でもある。少し高くてもやはり「白き泡」の誘惑には勝てる気がしない。


アルファ碁が3連勝

2017年05月30日 09時17分

 数年前のことだが、『叛逆航路』(アン・レッキー、創元SF文庫)という作品が英米の名だたるSF文学賞を総なめにした

 ▼物語の舞台ははるかな未来。主人公はネットワークで同時に数千体の人間型生体兵器を操ることのできる宇宙戦艦のAI(人工知能)である。このAIはほぼ独立した意識を持ち、戦艦としての役割を果たしながら、宇宙の隅々にまで行き渡らせた分身を使って情報の収集や工作活動を行う。物事をあまねく知っていて自ら判断を下し、必要とあらば迷いなく実行に移す。生身の人間の出る幕など全くないに等しい。今、こんな存在がもしあったとして、何かに例えるとしたら神くらいか

 ▼それを思い出したのは、AI開発ベンチャー「ディープマインド」の囲碁ソフト「アルファ碁」が先週、3人の中国人棋士を立て続けに破ったからである。世界最強とも称される3人だったという。なのに歯が立たなかった。神ではないにせよ、少なくとも人間を超えるAIは既に出てきているのだ。優れたAIがあれば多くの問題は解決され未来はバラ色。そう考えたいところだが、中には暗黒の未来を予想する人もいる

 ▼AIを多角的に検証した『人工知能 人類最悪にして最後の発明』(ダイヤモンド社)の著者バラットは、AIの「進化」でAIと人間は人間とネズミほど知能差が開くと警告する。人間は突如現れた神のような存在に物として扱われるだけになるというのだ。しかも遠い未来の話ではない、と。ただの碁だろ、と安心しているなら、もう手の内にはまっているのかも…。


未来の建築

2017年05月27日 10時00分

 米ニュース専門放送局CNNの日本語サイトに出ていた新しい建築技術を見て目を見張った。何と空中に浮かぶビルだという。地球周回軌道に置いた小惑星からケーブルでつり下げるそうだ

 ▼にわかには信じ難いが大真面目な話らしい。ニューヨークの建築事務所「クラウズ・アーキテクチャー・オフィス」が最近、発表したものである。ビルの一番上は高度3万2000mに達し、時速480㌔で移動するとのこと。原理は単純である。炭素繊維やアルミなど軽量かつ高強度の建材でビルを構築し、頑丈なケーブルで小惑星とつなげるだけ。まあ、それを実現する技術がまだ実用段階にないのが課題ではあるが

 ▼さて、生活に必要なエネルギーや水の供給はどうするのか。電力は宇宙空間に設置した太陽光パネル、水は雲や雨から集めた水を使うそう。事務所によると、利点は洪水や地震、津波の被害からの解放。確かにそれも心配だが、坪単価がどれだけ天文学的数字になるのかも大いに気になるところである。このニュースを目にして、日本にも未来の建築構想があったのを思い出した。らせん構造を深海から立ち上げる清水建設の未来都市「OCEAN SPIRAL」、高さ4000mの富士山型都市を造る大成建設の「X―SEED4000」、大林組の宇宙エレベーターあたりがその代表格だろう

 ▼「天王星に買った避暑地のあさがほに夏が来たのを報せておかう」荻原裕幸。天王星とまではいかなくとも、宇宙に、空中に、深海に、人間が快適な避暑地を持つ日はそう遠くないのかもしれぬ。


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