「昼間にお酒なんて、不謹慎な」というツッコミがあるかもしれません。それくらい、お酒は夜飲むものというのが常識であり、昼に酒を飲んでいるのは遊び人か、依存症の人というイメージなのでしょう。でも、改めて考えると、結構、昼間にお酒を飲む機会はあるものです。
まずは、お正月。元日は新年を祝って朝から一杯、お昼はお年始のあいさつや親せきが集まって一杯…。結婚式などの祝宴も昼に行われることが多いですね。なので、午後には十分な量のお酒が入ります。晴れの席だから、昼間にお酒を飲んでも許される、といった感じなのでしょうか?
一方、休日の午後に家でゆっくりとビールなど楽しむ人も意外と多いと聞きます。私の場合は、マラソンの打ち上げで、ゴール後に時間を置かず仲間とビール、ということが多いのです。実は、皆さん「昼飲み」を楽しんでいます。
昼にお酒を飲むと、「酔いが早く回る」「いつもより酔っぱらってしまった」「顔が赤くなって恥ずかしかった」などの感想をよく聞きます。私の実感でも、昼のお酒は抜けにくく、元日はほとんど寝正月になってしまいます。
なぜ、昼に飲むと酔いが回りやすいのでしょう。「昼間に飲んでいるという罪悪感のせいだ」「昼間に飲むのは気持ちがいいので、つい飲み過ぎる」など、いわゆる「気のせい」という意見が多かったのですが、最近、医学論文が出て、科学的な根拠があることが示されました。
ご存知のように、お酒に含まれるアルコールは、肝臓で分解処理されます。このときに使われる酵素の量が、1日の間に変動することが分かったのです。この酵素は夕方から夜間にかけて多くなり、その時間帯に飲酒してもアルコールが速やかに分解処理されて、酔いが長く続かないというのです。
逆に言うと、朝から昼間には酵素の量が減って、アルコールの分解処理が遅くなり、体にたまりやすくなるので、酔いやすいという訳です。これは実感に合っているので納得ですね。
昼間にお酒を飲むと、早々に酔いが回って、醜態をさらすことが多くなるので、昼間の酒は避けるようになった、ということのようです。さらに、昼間に飲むと、アルコールが体内に長く残ることになるので、アルコール依存症になる危険性も高まると考えられます。やはり、昼間の飲酒は控え目が得策のようです。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)