北海道鍛冶施工協会は、ビルや商業施設などS造の建築工事で現場溶接を担う鍛冶工による団体として札幌や旭川などの企業12社からなる。北川敏夫会長(石狩機材社長)は、会員の技術向上につながる勉強会や学生向けのインターンシップ実施などを計画している。人手不足が叫ばれる中、鉄骨工事の現場では特に鍛冶工不足が深刻で業界を挙げた改善策が求められている。北川会長に鍛冶工を取り巻く市場環境について聞いた。
―北海道鍛冶施工協会とは。
現場溶接をする鍛冶工を有している専門工事業者の組織。2018年11月に設立し、当初は札幌を中心とした10社が集まった。1年が経過し、新たに旭川と札幌の会社が加わったので会員数は12社になる。会員相互の融和を図りながら情報交換したり技術研さんするのが目的だ。
―具体的な活動内容は。
例会を年4回ほど開いている。今後は2月に現場報告会を企画し、各社が現場で進めた施工方法などを共有する。学生向けのインターンシップも予定しており、鍛冶工の仕事を身近に感じてもらえればと思っている。
―鍛冶工について。
鍛冶工は、建築現場でアンカーボルトを組み立てセットしたり、鉄骨工事現場での納め仕事や金物の取り付けなど幅広い仕事をしている。さらにはデッキプレートを敷いたりと鋼構造物の工事にはなくてはならない仕事だ。
―協会設立の動機を。
建設業界で人手不足が深刻化する中、どこの現場も鍛冶工が特に不足している。同業者が集まり互いの状況を共有することで〝鍛冶工が不足する現場に職人を融通する環境をつくろう〟というのが狙いだ。
建設業許可の業種29区分で、鉄骨加工会社は鋼構造物工事業に分類されるが、鍛冶工はどの業種にも属さない。鉄骨加工会社の下請け、ゼネコンの雑工事のような位置付けで世の中から認知されていない。2―3人の少数精鋭の会社が大半なので、現場に出るのが最優先となり、どうしても横のつながりは薄くなっていた。
―足元の業況について。
鉄骨業界は波が大きいが、先行きも仕事は続くとみている。札幌中心部のビル建て替えや北広島のボールパーク、北海道新幹線の駅整備などが要因だ。北海道だけ見れば5年から10年は続くのではないだろうか。
全国的に高力ボルトの品不足が問題になっているが、中小物件が少ないことやS造からRC造への設計変更が進んでいるため年内に解決すると思う。
―今後の抱負を。
まずは、鍛冶工について認知してもらうことが大事だと思う。機械化が難しく、無くなる仕事ではないので若い人の入職を促さなければならない。女性や外国人の活用も視野に入ってくるだろう。
世の中の認知度を高めるため協会を活性化させたい。今後も会員企業は増える見込みで、全道各地に支部を構えるなどネットワークができれば幸いだ。(聞き手・佐藤 匡聡)
北川敏夫(きたがわ・としお)1952年小樽育ち。17歳で本州に渡り、職人として鉄骨のリベット打ちに従事。19歳のときに兄らと独立。71年に法人化し、北川組鉄工所(本社・小樽)の専務に就く。91年に石狩機材を設立し、専務を兼務。2013年から現職。
(北海道建設新聞2019年12月5日付2面より)