世界へ広がれ 札幌の味
新型コロナウイルス感染拡大による外食需要減という逆風が吹く中、製麺大手の西山製麺(本社・札幌)は、本社を増築し、輸出製品の製造強化、新商品の研究開発などに取り組む。巣ごもり需要を受けて存在感を強める宅配用の麺や、家庭用商品の営業も強化する構えだ。札幌ラーメンの看板を背負って挑戦を続ける西山隆司社長(62)に今後の展望を聞いた。
―約10億円を投じる本社増築と機械設備増強の狙いを。
増築部分に現工場の開業支援スペースなどを移転させるとともに、新商品開発スペースを設けて国外で求められているグルテンフリー麺の開発に臨む。現在は工場ライン停止後に試作しているため、開発速度を上げて素早くニーズに対応したい。現工場の空いた部分には輸出向けの乾燥麺製造ラインや冷凍庫を増設する。日持ちする乾燥麺は中国など国外からのニーズが高い。
開業支援スペースでは、模擬店舗で実践に近いラーメン作りを学べる。増築部分への移転を機に面積を広げ、設備を充実させる。国外に札幌ラーメンを普及させるには、事業者への支援が不可欠。これも当社の役割と捉えている。
―コロナ禍で外食需要が減少しているが、その影響は。
当社の売り上げは店舗向け65%、家庭用を含む小売り向け35%の内訳。コロナ禍による外食需要低下を受け、2020年の売り上げは前年比11.5%減の30億円ほどとなった。ことしも苦戦が予想される。
―どのような戦略を取るのか。
道内外の名店の味を再現できる新商品を増やし、家庭用市場への営業を強化する。加えて、今まで力を入れていなかった道外小売店への営業も進めている。
ことしは、小売り向けの売り上げが前年比35%増と好調。エリアで見ると道内が15%増、道外が2倍増で成果が表れていると感じる。
ラーメン店には、宅配用の麺を売り込んでいる。国外でウーバーイーツなどの宅配事業が盛り上がりを見せていた頃から、将来的な需要増を見据え、伸びにくい麺の開発に取り組んでいた。
国内でも宅配事業が盛んになり、コロナ禍でさらに需要が増えた。店舗では他社の麺を提供していても、宅配用は当社の麺を選ぶ事業者も増えている。
―国外での販売状況は。
ヨーロッパを中心に31カ国、約120店に麺を輸出していて、その売り上げは全体の13%ほどを占める。すしに並ぶ日本食として、世界のラーメン市場は発展するとみている。
ラーメンは、中国の麺料理と日本の食文化であるしょうゆやみそが融合し、今の姿につながった。各国なじみの味から、ラーメンは進化を遂げるだろう。イタリアでは「カルボナーララーメン」を食べた。とてもおいしかったし、店舗は現地の人でにぎわっていた。ラーメンに「禁じ手」はない。
国外展開などが進んだ将来には、さらなる工場増築も視野に入れ、周辺の土地取得を進めている。あくまで札幌市内での製造にこだわる。当社の商品は「札幌ラーメン」であり、札幌市の皆さんに育ててもらった大切な文化だからだ。(聞き手・宮崎嵩大)
西山隆司(にしやま・たかし)1958年10月26日生まれ、札幌市出身。81年中央大商学部経営学科卒、すかいらーく入社。83年に西山製麺に入り、2001年から現職。