コロナ禍 暮らしを考える
札幌証券取引所アンビシャスに上場した2019年6月以降、神奈川県厚木市でグランファーレブランドの分譲マンションを土屋ホーム不動産と共同販売するなど、首都圏に事業拡大している日本グランデ。平野雅博社長に道外進出の手応えやコロナ禍の対応などを聞いた。
―首都圏でマンション事業に本格参入した狙いを。
20年11月に神奈川県の本厚木駅から徒歩6分の場所で、1、2LDK主体の分譲マンションを新規発売した。当時、建設地周辺では大型マンション5、6棟が竣工を控えるなど完成在庫を多く抱え、値段も下げていた。最初は心配したが、他社と差別化を図ろうと収納を多く取ったり、電気自動車を提供して無料で利用できるようにするなど工夫した。炭を使った換気システムの導入は、コロナ禍の影響もあり反響があった。30代から興味を持ってもらい、現在までの成約率は70%と好調に推移している。21年3月の竣工だが、まずまずのスタートを切った。首都圏2棟目は東京都内で供給したいと考えている。
―上場後、経営環境はどう変わったか。
大きな意味で言えば、資金調達手段が広がったことと、企業の社会的信頼性が高まったことで人材の採用がしやすくなった。以前よりも応募者が増え、人のレベルも上がったような気がする。
―コロナ禍でどのような影響が。
これまでチラシや新聞広告を入れるとフリーで来場してくれたが、今はほとんどない。完全予約制の営業に変えたことで業務は大変になったが、一人一人時間をかけてお客さまと交渉ができるようになったし、本当にマンションを欲しいと思う人が来るため、結論が早いと感じる。それでも、コロナ禍で営業が制限されたため20年は厳しい状況だった。7月に入ってからは、モデルルームの来場者は増えている。
―マンションのコンセプトに変化は。
4月に宮の森地区で発売したマンションは、感染予防対策として共用施設にテレワークルームを導入した。新しい生活様式を見据え、玄関入り口ドアに消毒ボトルラックを設置したり、ウオークインクローゼットからテレワーク空間に変更できる無料サービスも実施している。ライフスタイルに合わせて収納からコンパクトな書斎へと自由な空間を提案できるようにしている。
―コロナ禍、どのような事業展開を考えているか。
金融緩和の下支えもあり株価はいったん下げたが、コロナ前までおおむね戻していて、不動産価格もほとんど下がっていない。今後は金融緩和で運用難に陥った資金の受け皿として不動産投資のニーズが一層高まるだろう。リーマンショック級かそれ以上の経済ショックといわれるコロナ禍にあっても、マンション価格は高値安定で推移している。現在の市場構造が経済ショックに強い体制を持っていることが証明されたのではないか。
新規参入するマンションデベロッパーはここ10年で7、8社増えている。だが、1社当たりの発売戸数は上がっていないため、全体の供給量は一定のままだ。一番の理由は建築費と土地価格の高騰だと思う。このため、新規の発売戸数を控えたり、共同販売でリスク回避したりする。リーズナブルなマンション開発が難しい環境下にある。弊社としても今は供給戸数を伸ばそうとは考えていない。コンセプトをしっかり打ち出し、札幌、都市圏でしっかり売れるマンションを提供したい。
(聞き手・武山 勝宣)
平野雅博(ひらの・まさひろ)1958年1月生まれ、東京都出身。80年ダイア建設に入社。97年から北海道支店長を6年経験。退社後、2003年4月に日本グランデを設立し、現職。
(北海道建設新聞2021年7月14日付2面より)