北海道150年を支える~地域発展のストーリー

北海道150年を支える~地域発展のストーリー ⑧稚内港

2018年08月29日 11時00分

世界をマーケットに展開へ

■大型クルーズ船対応 サハリンプロジェクト支援機能も強化

 日本最北の重要港湾の稚内港はことし開港から70年を迎えた。1957(昭和32)年の重要港湾指定から、道北地域の物資流通拠点や北方漁業基地、利尻・礼文の離島に加え、ロシアサハリン州への連絡港として重要な役割を担っている。近年は大型船の受け入れ体制強化に向けた整備に取り組んでおり、今後も宗谷管内の発展を支える港湾として期待が高まる。

 港湾管理者の稚内市は、2014年度から稚内港の長期構想計画と新港湾計画をスタートさせた。長期構想の中で、世界・全国からの観光客誘致や、サハリンプロジェクトへの資機材供給支援基地機能強化などを盛り込んだ。

日本最北の重要港湾稚内港。離島やサハリンを結ぶ交通結節点や、道北の流通拠点として宗谷管内の発展を支えている

 稚内開建は、16年度から同港末広ふ頭東岸壁で末広地区クルーズ船等対応施設整備に着手。工事では、末広ふ頭のマイナス12m既存岸壁(延長240m)の老朽化対策や、係船柱2基新設などにより、12万㌧クラスの大型クルーズ船などが寄港できる施設整備を進めている。一部施設は18年度に供用開始し、18年度末までに残る連絡橋2橋などの工事を終え、整備を完了させる予定だ。

 18年度はこれまでに、飛鳥Ⅱなどの大型クルーズ船が稚内港に寄港。7月に開催したクルーズ船等対応施設供用式典で、工藤広稚内市長は「今後もポートセールスを強化しながら道北地域の魅力を発信し、最北のクルーズ拠点を生かした取り組みを進める」と述べた。

 稚内市は、漁業や酪農などの1次産業とともに、観光産業が地域経済を支えている。宗谷管内の17年度観光入り込み客数は、3.4%増の193万7600人で、7年ぶりに190万人を突破。訪日外国人宿泊者数も33.6%増の2万5951人と、アジア諸国を中心に伸びている。16年度には、稚内や留萌など道北地域とインバウンドの拠点である札幌、旭川をつなぐ広域観光周遊ルート「日本のてっぺん。きた北海道ルート。」が観光庁に認定された。

 長期構想のコンセプトに掲げた「世界をマーケットと捉えた稚内港の展開―最北の拠点港稚内港から世界へ、世界から稚内港へ―」が示すように、国内だけでなく、稚内―コルサコフ間を結ぶサハリン定期航路などを生かした世界視点での稚内港の活用と発展が求められている。

土木遺産・北防波堤ドーム

■シンボルの港湾施設 若き技師が設計した特徴的な柱

 稚内市のシンボルとなっている北防波堤ドーム(延長427・6m、高さ13・8m)は、長い間市の発展を見守ってきた。2001年度には北海道遺産、03年度には土木学会選奨土木遺産に選定された。同施設を会場としたイベントも開催されており、多くの市民に親しまれている。

 北防波堤は、樺太(現サハリン)との連絡港として交流が盛んになった1920(大正9)年に竣工。建設当初、北防波堤は高さ5・5mの直立式防波堤だったが、防波堤を飛び越える波浪と強風から、樺太航路連絡船発着場の乗客や貨物の安全確保を目的に、北防波堤ドーム建設が計画された。

 設計者は、北海道帝国大工学部を卒業し、稚内築港事務所に配属されていた若き技師の土谷実氏。ドーム本体は、梁(はり)と柱を防波堤の胸壁・地杭で支持する固定ラーメン構造で設計し、特徴的な70本の柱は古代ギリシャ神殿をほうふつさせる。

長年稚内市の発展を見つめてきた北防波堤ドーム。半アーチ型の巨大構造物の迫力に多くの人が目を奪われる

 基礎は柱を支点に逆アーチ基礎を連続させ、下部をスチームハンマーで打ち込んだ地杭で支持。ドーム部のコンクリート打設は、支保工を兼ねた約12mの大型型枠2基を移動させながら打設する工法を採用し、31(昭和6)年から36年までの6カ年で完成させた。

 その後、78年から3カ年かけてドームの全面修復を施し、2代目となる現在の北防波堤ドームの姿となった。99年には柱部の耐震補強や劣化部分の補強工事を実施し、現在は16年度から予防保全計画に基づき、断面修復など大規模な老朽化対策を進めている。

 市は、90年度に策定した稚内マリンタウンプロジェクトにおいて、第1期でANAクラウンプラザホテル稚内や温水プール水夢館などを、第2期でフェリーターミナルを整備。第3期では、海洋研究施設の誘致や北極海航路の寄港地など国内外の交流ネットワーク形成による知的・経済的な地域振興を目標に掲げ、長期的な視点で計画実現に取り組む方針だ。

 17年度からは、北防波堤ドームを会場にアーティストがライブペインティングを行う「稚内アートフェスティバル」など新たな取り組みも始めた。今後も、北防波堤ドームは稚内市のシンボルとして歴史を次世代に伝え、さらに発展していく街を見守り続ける。

(稚内支局 佐藤朋紀記者)


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