事業承継、農家支援に力
北空知信用金庫(北空知信金)は、深川に本店を構える地域金融機関。近年は大学や税理士法人と連携し、地域活性化に向けた取り組みを重要視している。地域振興グループはその中核を担い、最近は札幌を中心に活動するベンチャー企業の誘致を果たし、将来の事業性を評価した上で融資を実施。第一線で汗を流す及川賢一副長にグループの目指す姿を聞いた。
―北空知信金について。
1950年7月に設立し、店舗は深川3カ所と旭川2カ所、妹背牛、沼田、秩父別、北竜、雨竜、幌加内、滝川が各1カ所となっている。札幌は2020年4月に麻生支店をオープンさせて2カ所となる予定だ。
19年3月期の預金額は1258億2300万円で前年より10億円ほど増えた。貸出金額は635億8500万円で29億円ほど多くなった。顧客は商工の経営者や個人が大半だが、最近は農家向けローン商品の拡充など農業支援に注力している。
―地域振興グループとは。
地元に根差した金融機関を深化させるため、各部署を横断する組織として18年4月に設けられた。ここ数年は預金額など増えているが、将来の収益環境悪化を想定したとき、トップ(理事長)を中心に「今やらなければ先々手掛けるのは難しい」と考えたという。
仕事の一つが事業承継支援。昨年、与信融資のある取引先を対象に実態調査をしたところ、地域の社長の平均年齢が高く、後継者との交代時期が決まっていると回答したのは1割もいなかった。あと10年や15年するとそうした企業は地域から無くなる可能性もある。当庫は従来のような融資の仕方ではなく、後継者の有無など企業の将来に向けた事業性を重要視するようにしている。
―他地域のベンチャー企業への融資について。
販路が無く資金も少ない企業に対し、普通の金融機関なら融資を迷うだろう。しかし、小さな地域では廃業する人はいても起業する人は少ない。そんな中、他地域のベンチャー企業が本社を深川に移し、さらに雇用者も連れてきてくれるという話になった。昨年、北大と産学連携の協力で覚書を交わし、人的交流からつながったのも大きかった。
地域を考えたとき、そうしたベンチャーの社長が描く新しいビジョンに賭けてみたいと思った。言葉では言い表せないが、熱意を感じ取れた。最終的にはフェース・トゥー・フェースだろう。
―北空知信金の強みを。
地域の方から「信金さん」と親しまれる敷居の低さが特徴。お客さんの利便性と地域貢献を常に考え、ビジネスマッチングのほかバドミントン、ミニバレーなど各種冠大会を開催している。
従業員の若さも強み。平均年齢は34歳8カ月で、10代や20代が新たな発想で地域のために取り組もうとしている。
―今後の抱負を。
活動の一つとして、北空知管内の米農家や畜産農家の支援に注力したい。最近は税理士法人小島会計(深川)と農業関連事業者の支援を協働で推進するため、業務連携に関する覚書を交わした。今後は農業専担者を配置し、具体的な活動を進める方針だ。微力だが、地域の金融機関として顧客の力になれるよう今後も頑張りたい。(聞き手・佐藤 匡聡)
及川賢一(おいかわ・けんいち)1983年、深川生まれ。2006年に札幌大を卒業し、北空知信金に入庫。営業職として沼田支店で3年務めた後、本店や旭川支店で経験を重ね、18年4月に地域振興支援部(現・地域振興グループ)に配属される。
(北海道建設新聞2019年12月19日付2面より)