重要な役割 一層尽力を
北海道パン・米飯協同組合は、学校給食向けに高品質なパンと米飯の製造・供給を担う組織。設立は戦後間もない1948年で、北海道の子どもたちの昼食を長く支えてきた功績は大きい。新型コロナウイルス感染症対策で小中学校などが臨時休校となり、空前の苦境に立たされる中、伊原潤司理事長に業界の今を聞いた。
―学校給食の仕事について。
われわれ学校給食のパン業者は、公益財団法人北海道学校給食会から小麦粉や米など主原料の供給を受け、加工するのが仕事。1食当たりの加工賃は決まっていて、食数(生徒の人数)を掛けることで収入となる。少子化でマーケットは縮小している。
給食専業で何とか会社を維持できているのは旭川と函館、釧路で供給しているところ。その他は洋菓子業などとの兼業で、給食の割合が低い。
地域の社会的な任務の中「うちがやめたら給食パンを作る会社はいない」という責任感から本業から収益を回して学校給食事業を維持しているのが実態だ。
―新型肺炎への懸念から全国の小中学校などが臨時休校しているが。
このままだと3月は一度も給食を提供する機会がなくなる。給食をなりわいとしている人たちの仕事がなくなることについて、分かっている政治家や自治体担当者は少ない。補償の仕組みもない。
国の政策で、在るべき仕事の供給機会を剥奪されたのは、これまで体験したことがなく、全国の仲間が参っている。全国組織の全日本パン協同組合連合会も国に救済策を要望すると聞いている。
―北海道パン・米飯協同組合について。
組合員数はピークの2000年ころで100社超だったが、直近の19年4月は58社と減っている。多くは会社を代々引き継いで事業を続けている。だが、子や孫に継がせても食べていけない状況のため、廃業を考える会社は後を絶たない。
食品加工に求められる衛生管理手法「HACCP(ハサップ)」に対応するため、設備の維持管理に多額の費用がかかるようになったのも業界撤退の要因だ。業容が縮んでいくのは分かっていながら、さまざまな意味での締め付けは強くなっている。
―建物や設備面での課題は。
各社の工場が築年数を重ねて老朽化する中、近隣3―4地域の業者が集まって新会社をつくり、HACCPに対応した建物を建て、地域の給食を担っていくという動きは全国的に加速している。
決して〝行け行けどんどん〟ではなく、自己防衛的な意味合いは強いが、一定規模の工場が立ち上がる可能性を秘めている業界だ。
廃業したり、給食加工の権利を返上する会社が増える動きは止められないはず。今後は工場の集約化が進む可能性がある。
―集約化が生き残り策ということか。
集約化すれば1工場当たりの供給エリアが広くなり、パン1個の値段よりも運賃の方が高くなる現象も起こり得る。そうしたジレンマの中で業界がどうなっていくか、よく考えなければならない。
―今後の抱負を。
子どもは日本の宝であり、学校給食のスキームをずっと維持できるよう努力したい。健全な成長や発育に資するためには、学校給食の果たす役割は変わらず、むしろ一層重要になる。根幹を担う仕事だと自覚を持ちながら、喜んで食べてもらえる学校給食の提供に向け、裏方として尽力したい。(聞き手・掛端 雅彦)
伊原潤司(いはら・じゅんじ)1956年11月、美唄生まれ。北大経済学部卒。55年創業の伊原商店3代目社長。2018年から北海道パン・米飯協同組合の理事長を務める。旭川市内で道央食糧供給を経営し、18年には15億円を投じ最新鋭の工場を新築した。
(北海道建設新聞2020年3月3日付2面より)