業界連携 負の連鎖断つ
新型コロナウイルス感染拡大が国内で顕在化して約3カ月。外出自粛や企業活動の縮小が続き、本道経済は急速に悪化している。足元で何が起こり、企業や地域には今何ができるのか。北海道二十一世紀総合研究所執行役員の横浜啓調査部長は「難局をしのぐため、同業者間で連携することも必要」と指摘する。
―出口が見えないコロナ問題だが、これから何が予想されるか。
差し当たって懸念されるのは「負の連鎖」だ。コロナの悪影響が、飲食、宿泊、一部小売りやレジャー関連など最初に打撃を受けた分野から、不動産や運輸といった隣接分野に広がる可能性がある。数カ月で収束するなら今の社会システムが大きく変化することはないと思うが、長期化すれば世界の姿が変わるかもしれない。今後のシナリオを予想するのは誰にとっても難しいのではないか。
―直近、商業施設などで賃料を払えないテナントが出ている。
連鎖の典型だ。資金力のある流通大手の施設なら計画通りのテナント料収入がなくてもしばらくは耐えられるが、道内は大家も店子(たなこ)も中小規模であることが多く、大家も危なくなる。今は中小の運転資金は相当苦しく、経営者は資金繰りに追われている。公的機関が出す支援制度を巡っては、情報収集と行動のスピード勝負のようになってきた。
―札幌の繁華街も人通りが減った。
来店客減に対応しようと飲食店が宅配サービスを始めるなど、現時点でも事業に変化が出ている。消費に関して確実に言えるのは節約志向が急に強くなってきたこと。事態が長引くと感じる人が増えているからだ。百貨店のブランド衣料などが動かず、産地や栽培法にこだわる高級食材なども値崩れしている。一方で日常的な食材の売れ行きは悪くない。むろんドラッグストアなどの衛生用品は極めて好調だ。
―建設業をどのように見る。
働き手の確保が課題だろう。公共事業という需要サイドがしっかりしているため、持ちこたえられるという声は聞くが、このところ増え続けていた外国人の働き手が当面来られない状況だ。また清水建設の閉所が発表されたように、現場でのウイルス感染リスクから国内の人手も確保しにくくなれば、建設サービスの供給が追い付かなくなる。
―業種を問わず今考えるべきことは。
最優先すべきは事業を消滅させないことで、これが雇用、人々の生活の維持に直結する。ウイルス感染拡大は1社の努力で克服できる危機ではなく、競合同士でも協力し合わなければ乗り越えられない。業界内で知恵を出し合い、連携することを呼び掛けたい。
―今は耐え忍ぶしかない時期か。
暗い話一色になりがちだが、いずれ事態収束後に北海道経済をどう回復させるかという話も増えるだろう。リーマンショックのときにはゼネコンが人を減らしすぎ、その後工事が復調したとき逆に人手不足が問題になったこともある。
「コロナ後」の地域経済を考えるときの鍵となるのは製造業だ。日本企業は近年、サプライチェーンの海外依存度が高すぎた反省から一部の生産を国内に戻す傾向にあった。今回の事態でその認識はさらに強まっている。こうした背景を踏まえて北海道にはどんな産業誘致・育成がふさわしいのか、議論を深める必要がある。
(聞き手・吉村 慎司)
横浜啓(よこはま・ひらく)1960年11月生まれ。83年同志社大卒、北海道拓殖銀行入行。98年北洋銀行入行。伊達支店長、融資第一部審査役などを経て2015年に北海道二十一世紀総合研究所入社。
(北海道建設新聞2020年4月17日付2面より)