深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 長谷川ファーム北海道 伊達弘恭社長

2020年08月11日 10時00分

伊達弘恭社長

魅力あふれる定山渓へ

 コロナ禍で屋内型のレジャーが苦戦を強いられる中、「3密」になりにくい野外施設に光が当たりつつある。札幌市南区の果樹園をベースとする「フルーツテーマパーク 定山渓ファーム」もその一つ。足元の状況や、2016年の開業からの経過について運営する長谷川ファーム北海道(本社・札幌)の伊達弘恭社長(58)に聞いた。

 ―コロナの緊急事態宣言が明けて約2カ月。客足はどうか。

 今シーズンは5月上旬に開園したが、コロナの影響で6月までは非常に厳しかった。ただ、7月中旬あたりから徐々に来園者が増え、週末には入園受け付けを待つ人の列ができるようになった。来場客のSNSを拝見すると「園内は3密とは無縁」「久しぶりに深呼吸をした」などの評価を頂いている。下旬の4連休もにぎわった。

 ―21haの広大な敷地にツリートレッキングなどアクティビティも多い。施設づくりの考え方は。

 目指すのは自然と食のテーマパークだ。単なる果樹園・庭園ではなく、ディズニーランドのように3世代が1日中楽しめる施設にしたい。開業以来、さまざまな花を植えた庭園を整備し、今はベンチに腰掛けてコーヒーを飲みながらゆっくり過ごすこともできる。テラスで食べるジンギスカンや、独自レシピで作ったハンバーガーなど飲食サービスも好評だ。釣り堀、キッズ向けの無料遊び場ゾーンも設けた。

 ―外国人観光客がいなくなったのは痛手では。

 もともと外国人客は全体の1割程度だ。それよりも地元の人に繰り返し来てもらえる施設を目指してきた。初年度はセンターハウスぐらいしかなく営業的にも苦労したが、園内設備に段階的に投資した結果、SNSで高い評価を得るようになり、4年目の去年は4万人を集めることができた。ただ、まだ施設づくりは5合目程度。整備を進め、将来は年間来園者数10万人を達成したい。

 ―運営会社は、飲食チェーン・ホテルなど幅広い事業を手掛ける東京の長谷川トラストグループの子会社だ。

 会長の長谷川芳博は遠軽町出身で、北海道の農業に思い入れが強い。当園の前身となる果樹園を15年にグループで買収し、その前に買収した北広島の農場と併せた事業会社として、当社を立ち上げた。私はグループの社員ではなく、地域振興のコンサルタントとして活動していたが、旧知だった長谷川会長に頼まれて経営を引き受けた。私は「奇跡のリンゴ」で有名になった青森の農家、木村秋則さんのお手伝いなどを通して農業に携わった経験があり、農業と経営が分かる人間ということで声が掛かった。

 ―自身はどのようなキャリアか。

 新卒でコンピューター会社に入り、営業職をしていた。営業成績が良く自信がつき、若くして独立したが、何度も事業に失敗し、体調を崩して引きこもり状態だったこともある。いろいろな時期を経て取引先に紹介された木村さんと仕事をする中で農業を学び、その知識と経験を生かすことでコンサルティング事業が軌道に乗ってきた。そんなタイミングで新しい挑戦の機会をもらった。

 ―コンサルと施設運営では大きく異なる。

 地域の役に立ちたいという点で違いはない。当園が定山渓地区の魅力を高める存在になれば、地元の宿泊や飲食業にもいい影響が出る。プラス効果が定山渓だけではなく南区、札幌全体、北海道全域へと及ぶようになるのが理想だ。

(聞き手・吉村 慎司)

 伊達弘恭(だて・ひろやす)1962年札幌市出身。85年北海道東海大卒、北海道ビジネスオートメーション(現HBA)入社。99年に独立後、複数の事業を経て、地域づくりコンサルティングのイー・ネイチャーズを設立。2016年4月から現職。


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