深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 恒志堂 佐藤元春社長

2020年09月01日 10時00分

佐藤元春社長

生活彩る価値生み出す

 不動産業やカーレース、介護福祉など多彩な事業を手掛ける恒志堂(本社・札幌)が次に目を付けたのが、eスポーツ事業だ。運営するホテルへの専用フロア導入に始まり、学校開設、商品開発まで展望を描く。賃貸マンションでの新たなサービスなど不動産業者としてさらなる進化を目指す佐藤元春社長に将来の道筋を聞いた。

 ―eスポーツへの事業展開について。

 各事業とeスポーツを融合させることにより魅力的なサービスを提供できると考えた。まずは得意とする不動産に組み込む。札幌市中央区大通西14丁目に新築中のホテルでは優れた防音設備や配信環境、ハイスペックマシンを用いたトレーニングも可能とするeスポーツに特化したフロアを用意する。特別な付加価値をもたらすことで、顧客の獲得を期待する。

 来春には道外の高校生プロゲーマーが入社予定だ。通常のホテル業務をしつつ、プレーアドバイザーなどを務めてもらい、事業を盛り上げてもらう。

 ―将来的にはどういう事業を。

 海外では大会が大型イベント化するなど、トッププレーヤーがプロスポーツ選手並みにお金を稼ぐほど発展している。eスポーツは他のアスリートと使う筋肉や反射神経が違う。将来的には能力を最大限引き出すためのeスポーツに特化したトレーナー、管理栄養士が必要になると予測していて、人材を育成する学校を開設したい。eスポーツ用のサプリメント、ドリンクをはじめとした商品開発も考えている。

 ―既存事業との融合は。

 賃貸マンションでの「家賃」という言葉を消したい。他業種は体験やサービス、モノなどを提供して対価をもらうが、不動産賃貸業は空間を貸しているだけだ。現状のままでは業界の成長はないと考えている。生活を豊かにする体験や便利さを組み合わせ、家賃ではないサービスの対価としてお金をもらいたい。

 その一つの手段としてeスポーツがある。例えば事業展開で得た知識やニーズを生かし、プロ選手並みのeスポーツプレー環境が整った部屋、ユーチューバーとして活動するための機材がそろった部屋などを提供する。これにより今まで部屋選びの基準となってきた建設地、広さなどに加えて新たな価値を生み出せる。

 また、介護福祉の現場では高齢者の認知症予防やリハビリにゲームが良いとされている。幅広い年代が交流するきっかけにもなる。

 ―賃貸住宅でのサービス提供という面でほかにアイデアはあるか。

 入居時に得られる入居者の年齢、家族構成、職業、収入といったデータを活用し、入居者の生活を豊かにするアプリなどシステム開発を検討している。

 今は「調べれば何でも分かる」時代だが、次は「欲しい情報が勝手に届く」が求められる時代になる。データから家族の誕生日が近づいたことを察知し、収入や家族構成からプレゼント、レストランの提案などができれば利用者は便利になる。

 入居する物件選びについては、取得したデータから自動提案することで仲介が不要になる。近年はどのビジネスも中間コスト削減に向けた動きがある。作ったものを消費者に届けるような動きが不動産でもできればと思っている。

(聞き手・宮崎 嵩大)

 佐藤元春(さとう・もとはる)1975年札幌市生まれ。北星学園大卒業後、98年4月に札幌セミナー(現・札幌練成会)に入社し、STV入試解答速報などを担当。2004年に有限会社恒志堂を設立し、07年に代表取締役に就く。その後不動産売買のスペチアーレ、サービス付き高齢者向け住宅運営のロータスなどグループ会社を設立している。国際C級ライセンスを持つレーサーとしての一面も。

(北海道建設新聞2020年8月28日付2面より)


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