深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り ティーケーピー札幌支店長 盛本毅司氏

2020年09月29日 10時00分

盛本毅司札幌支店長

リスク分散、コスト削減

 コロナ禍でウェブ会議が爆発的に広まった一方、社内の会議室を廃止し、必要なときだけ社外のスペースを借りる動きが出ている。全国で貸会議室を運営するティーケーピー(本社・東京)は、ウィズコロナ時代を見据えた会議需要のさらなる取り込みを狙う。盛本毅司札幌支店長(46)に事業拡大の戦略を聞いた。

 ―新型コロナウイルスの道内市場への影響は。

 送別会や新入社員研修が軒並み中止になったものの緊急事態宣言解除後の需要は順調に回復している。特にウェブ会議用途が堅調だ。ことしは会社全体で予約が数千件埋まっている。これまで道内は週2回程度だったが今では当たり前のように毎日ある。対面による会議は、30人前後の小規模開催が主流になった。

 ―ウェブ上の会議やイベントは無料ツールだけで済むのでは。

 確かに「Zoom」などウェブ会議向けツールは充実していて誰でも簡単に始められる。社員を1カ所に集めず、本社と地方の事業所をウェブでつなぐ会議の新規導入は全国的に増えた。社内のちょっとした会議ならば十分だが、ウェブ配信にトラブルは付きものだ。商談や記念式典は失敗が許されない。

 ウェブカメラの扱いが上手な社員や、高速のインターネットが使える配信用の部屋を確保できている企業は少ない。セキュリティー対策に不備があれば情報流出や不正アクセスの危機にさらされる。しかし、ウェブ上の集まりのためだけに人材や部屋を自社でそろえるのはコストに見合わない。必要に応じて当社のような会議運営のプロに任せる価値がある。

 ―対面での会議はなくなるのか。

 3密を避けた会議への企業の関心は高い。ウィズコロナ時代を見据えた会議の体験会を開くたびに相談が舞い込む。対面の場合、感染リスクが社員だけにとどまらず取引先や家族にも及ぶことを念頭に置いた慎重な判断が必要だ。ヒアリングした上で会場のレイアウトやウェブ会議への変更を提案している。

 ―オフィス縮小や会議室の廃止が増えている。

 特に100人以上の従業員を抱える企業は、リスク分散とコスト削減のため職場環境の見直しが急務だ。2019年に買収した世界的なレンタルオフィス「リージャス」の日本法人を通して、シェアオフィスなどを札幌市内4カ所で運営している。敷金と礼金なしで即日入居できるため必要な期間だけ借りやすい。サテライトオフィスの試験導入にもってこいだ。テレワーク導入企業であれば出社人数に合わせてオフィスの広さを調節でき、無駄なスペースを省けて経済的だ。

 ―施設がある札幌と帯広以外では利用できないのか。

 出張やワーケーションの需要を見込んでいて、道内拠点都市のよい物件があれば前向きに検討する。新しい施設が見つかるまではホテルの宴会場や公共施設の貸スペースを借りて対応する。受け付けや機材の操作は出張スタッフが全て担う。

 ―対面による採用面接や新入社員研修の希望が根強い。

 感染状況の悪化を想定したウェブ開催や延期への事前準備が大切だ。一度も会わずに採用活動や人材育成に取り組む企業は、採用者とのコミュニケーションに苦労している。新しい生活様式に適した会場づくりをサポートしたい。

(聞き手・城 和泉)

盛本毅司(もりもと・たけし)1974年札幌市出身。流通ビジネス専門学校卒業後、レンタル会社と広告代理店を経て、2014年TKP入社。関西支店営業部長、東京本社営業部長を歴任して20年3月から現職。

(北海道建設新聞2020年9月28日付2面より)


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