深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り クワザワホールディングス 桑沢嘉英社長

2020年11月20日 15時00分

桑沢嘉英社長

グループ20社、力を結集

 クワザワホールディングス(本社・札幌)は、道内トップの建設資材商社としての信頼度に加え、グループ20社の総合力と有資格者の技術・施工力で、スピード感ある事業を進める方針だ。2019年3月に東証1部上場、20年10月に持ち株会社化と、足早に変化を遂げる同社の将来ビジョンを桑沢嘉英社長に聞いた。

 ―持ち株会社化の目的を。

 持ち株会社がグループ全体の経営に専念する一方で、各グループ会社は役員の判断で迅速に意思決定し、スピードを上げて事業を進めるのが狙い。各社に権限を与えながら責任をはっきりさせることで経営の効率化を目指す。

 グループ会社は20社あり、それぞれにヒト・モノ・カネの経営資源がある。これからは各社の経営資源をグループのためにどう生かすべきか、幅広く考えたい。

 ―20年度上半期の業況感は。

 全国の住宅着工数は前年度同期比11%落ちた。北海道は6%減で、われわれが主戦場とする持ち家は10%落ちた。住宅分野は非常に厳しかった。

 新型コロナウイルスの影響で、需要が先送りになってしまった。ビルダーが客先に営業できなかったり、建て主の収入などライフプランが立てられなくなったりしてしまったため。住宅展示場や住設メーカーのショールームも休業に追い込まれた。リフォームは自分の家に他人を入れたくないという人が増え、需要が一斉に消えた。

 非住宅分野は大型物件に恵まれていない。19年度は新千歳空港の国際線ターミナルビル拡張工事など大ボリュームの物件があった。足元では北海道ボールパークなどの大型物件があるが、グループの収益柱となる内装工事はプロジェクト後半から関わってくるため、効果としてはまだまだ先。ホテルや商業施設の計画延期などもささやかれ、20年度下期は厳しいとみている。

 公共分野は、北海道新幹線札幌延伸に関係した生コンや土木資材を中心に2、3年は良い状況が続くとみている。

 全体として、ことしの後半と来年1年間は相当、心して掛からなければならないと考える。

 ―関東エリアに積極展開した狙いを。

 人口減少から、住宅着工の減少はやむを得ない。そんな中、大市場の関東にわれわれのノウハウやスキルを持ち込み、市場開拓できればと考えた。

 所得層の高い世田谷など城西エリアに営業所を設け、既存の顧客をケアしながら効率のよい商売を試みる。当社は品質や安全管理を徹底していることから、そういったことを望むユーザーに訴求できればと考える。

 4月に子会社化したフリー・ステアーズは、関東拠点にマンション大規模修繕工事を専門とする会社。クワザワは戸建てやマンション占有部分のリフォームを手掛けるが、マンション共有部分は手付かずだった。

 マンションはバブル期にすさまじい勢いで建てられ、それが築30―40年と老朽化している。新築が減る中、老朽マンションは年々増える。これから増える市場に対して事業を持ちたいと思い、7年前からストック需要に向けたビジネスパートナーを探していた。

 ―今後の目標は。

 これから市場は縮小し、並行して企業数も減ると思う。そうすると、同業の会社がわがグループに入ってくる可能性もある。中には「競争相手のクワザワの下には入りたくない」という会社も出ると思われ、その点ではホールディングカンパニーの方がグループに入りやすいはず。ホールディングカンパニーの強みを発揮したい。

(聞き手・佐藤 匡聡)

 桑沢嘉英社長(くわざわ・よしひで)1953年6月、札幌出身。76年東大法学部卒、東京海上火災保険入社。81年クワザワへ入社し、97年に代表取締役社長に就任。10月にクワザワホールディングス代表取締役社長に就く。

(北海道建設新聞2020年11月18日付2面より)


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