本間純子 いつもの暮らし便

 アリエルプラン・インテリア設計室の本間純子代表によるコラム。

 本間さんは札幌を拠点に活動するインテリアコーディネーターで、カラーユニバーサルデザインに造詣の深い人物。インテリアの域にとどまらず、建物の外装や街並みなど幅広く取り上げていただく予定です。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第2木曜日に掲載しています)

本間純子 いつもの暮らし便(3)「赤」と「青」が伝えること

2020年12月11日 12時00分

 前回、変更指示書は青で書くことを推奨する話をしました。「もしかしたら、誤解の種をまいたかも」と思いながらパソコンを閉じたので、誤解の芽が大きくならないうちに、今回は続きを書くことにしました。

 今年の春から、多くの場所が屋内全面禁煙に原則なったためか、禁煙マークを見かけることが少なくなったような気がします。赤い丸に斜めの線と煙がゆらぐたばこの組み合わせのマークですが、何年か前、その赤が青になっている「青い禁煙マーク」に出合いました。

 「色弱の人は赤より青の方が目立つから」と考えたのかもしれませんし、「色弱の人と同じ色を見るのが良い」と考えたのかもしれません。カラーユニバーサルデザイン(CUD)の取り組みの一環らしいことは、他の掲示物から、なんとなく分かりました。でも、これは、残念ながらCUDとはいえないのです。

 CUDの考え方に「そのデザインの本来の色は大きく変更しない」があります。赤い禁止マークは、赤であることが基本で、色弱者が認識しやすい「明るい赤(朱に近い赤)」がベストです。この場合の赤には「禁止」の意味があるので、色弱者が感じる赤と一般色覚者が感じる赤が一致していなくても、赤色が持つ禁止の意味は変わりません。

 色弱の人に青い禁止マークを見てもらったところ「変!」と即答されました。「禁止」という意味の赤を、他の色に置き換えると、禁止の意味が伝わりにくくなります。たとえ青の方が目立ったとしてもです。

 また、一般色覚者は多くの色を見分けられる目を持って生まれてきました。生まれついたその特性を無視して、色弱者と同色に見えるように調整することには、無理がありますし、色弱者もそれを望んではいないはずです。見分けにくい配色を修正し、全体のイメージは変えないようにする―。これがCUDの基本です。

 赤鉛筆や赤ボールペンで書き入れや修正をすることを「朱筆」(最近は「赤ペン先生」とも)といいますが、小学校の習字の時間は、本当に朱色の筆で訂正されました。

 「朱色が目立たなくて、なぜ朱色を使うのかが分からなかった」の色弱者の言葉に、朱筆ではなく「青筆」だったら、彼の疑問は起きなかったかもしれないなと思いました。でも、青筆になじむには、かなりの時間が必要な気がします。朱筆の歴史はとても長いので。

 この原稿を推敲するときは、紙に印刷してから、青のボールペンでチェックをします。赤を使うと、なんとなく急かされているような感覚になり、落ち着かないので、私の場合は青筆です。

 ところで、寒さとともに日没が早い季節になりました。夕暮れ時は暗くなるにしたがって、色彩がどんどん薄れていきます。いわゆる薄暮の時間ですが、興味深いのは全ての色が同じように薄れていかないことです。

 プルキンエシフトと呼ばれる現象で、明るいときの赤はとても認識しやすいのですが、暗くなると黒みを帯び、目立たなくなります。一方、青はかなり暗くても青と認識でき、明暗に関係なく青の見え方は安定しています。

 道路標識で青が多用されているのは、時間と場所を問わず青色の安定性が力を発揮している例です。見やすい青の活用方法、もっとありそうな気がします。

(北海道建設新聞2020年12月10日付3面より)


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