深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 東京農大 黒滝秀久教授

2021年06月14日 12時00分

黒滝秀久教授

追い風 現実は供給力不足

 新型コロナウイルスの感染拡大で発生したウッドショックは、道産材普及拡大のきっかけになり得るか。自然資源経営を研究し、道内林業に詳しい東京農大の黒滝秀久教授に現状と対策を聞いた。

 ―ウッドショックによる今後の住宅需要の見通しを。

 コロナ禍が落ち着けば戻ると思うが、日本では製材品輸入の際、基準をクリアしているか検査するJグレードがネックになる。輸出する側からすれば規格面で厳しい日本に出すよりは国内に回した方がリスクが少ないと考えるのが自然だ。米国の住宅需要に供給が追い付けば回復するだろうが、すぐに戻るわけではない。

 ―道内の林業にどう波及するか。

 間接的には追い風だ。道産材は本州のスギ、ヒノキに比べてm³当たり数千円安いことから、大量で安い木材のニーズに対して動くと考えられる。資源が豊富な分、北海道が市場で有利になるのは十分あり得る。ただし、単純に木材が足りないから売れるという話ではない。国内の72%、道内でも40%は輸入材に頼っている。さらに昨年の中国からの資材が滞って住宅着工が遅れた影響で国産材が停滞し、供給力がないのが現状だ。

 ―道産のカラマツなどは住宅用材に向いていない。

 20年前くらいから技術の進歩によって克服できている。確かにやに、割れ、とげ、ねじれがあったことから住宅用材として嫌われてきた歴史があり、市場ではスギ、ヒノキが主流だ。しかし、スギよりも強度が高くて価格が安いため、美幌や女満別などでは100%カラマツの住宅が普及している。トドマツについてはフィンランド産ホワイトウッドの代替品として使える。

 ―道産材をどう売るか。

 もともとカラマツは住宅用材に植えられたものではなく、炭鉱の地盤を崩さないための構造用材として生産されていた。炭鉱が閉鎖されたため使い道がなくなり、梱包(こんぽう)用の木枠として利用されるようになった。

 しかしこれだと捨てるのみになってしまい、付加価値がない。住宅用材に変える戦略を取るものの、全国的な木造住宅の年間着工戸数は1998年以降、50万戸前後と横ばい状態で、市場として伸びる可能性は低い。そこで木造高層建築に目を付けた。直交集成材(CLT)は有望で、持続可能な開発目標(SDGs)の関係から注目されている。

 ―カラマツの悪い印象は払しょくできるか。

 北見市留辺蘂町の木材加工業者などでつくる協同組合オホーツクウッドピアでは道内で唯一道産CLTを製造し、首都圏に売り込んでいる。コロナ禍で滞っているが、住友林業と三井不動産、竹中工務店が日本橋で計画している地上70階建ての木造高層建築ビルに使ってもらえないか交渉している。SDGsの面で道産の森林認証材を使うことは重要だ。道内のほとんどの森林が日本独自の基準であるSGECを取得しているほか、オホーツク管内では美幌が国際規格のFSCを取っている。森林認証を得た木材を供給すれば環境に優しいし、それがブランドになる。

(聞き手・福田 浩平)

 黒滝秀久(くろたき・ひでひさ)1957年1月生まれ、青森県出身。東京農大卒業後、89年に同大の専任講師に着任し、生物産業学部長を経て、2018年から現職。日本農業経済学会の常務理事や網走東部・西部流域林業活性化協議会の副会長なども務める。

(北海道建設新聞2021年6月11日付2面より)


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