深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り Knot 植竹大海社長

2021年10月27日 15時00分

植竹大海社長

醸造学べる施設にしたい

 クラフトビール醸造会社のKnot(本社・鶴居)は、道東でクラフトビール文化の新たな発信拠点づくりを目指す。旧茂雪裡小体育館を活用した醸造場「Brasserie Knot」の2022年開業準備を進める植竹大海社長に、ビール造りに懸ける思いや展望を聞いた。

 -北海道に醸造場を開くきっかけは。

 独立するなら北海道と決めていた。釣りやキャンプなどのアウトドアが好きで、北海道の自然環境に憧れがあった。新婚旅行で函館、小樽、札幌、旭川などを巡って以来、いつかは住みたいと考え、18年に上富良野町の忽布古丹醸造に入ることをきっかけに移住した。

 -なぜ鶴居村に。

 醸造場の立地を考えたとき、釧路管内にビール醸造場がないことに気付き、味わいの違いなどを楽しめるクラフトビール文化を広めようと開業に向けて物件を探した。しかし、ビール醸造場はタンクなどを設置するため広い面積が必要な上、製造過程で音やにおいも出ることから、周辺環境に配慮できるよい物件を見つけられずにいた。

 そんなとき、鶴居村に廃校があるという話をもらった。四角くて平らな体育館は工場へ改修しやすく、学びの場を再利用することは、「人を育てる」というコンセプトとマッチした。

 -設立資金を集めるためにクラウドファンディングを活用したが、手応えは。

 目標金額を1000万円に設定したが、結果として目標を上回る1670万円になった。地元の人も多く、地域を盛り上げる一環で期待してもらえたことは励みになる。クラウドファンディングの結果は、事業の期待感を測る指標にもなった。

 -どんな施設にしたいか。

 ビールを造りたい人らを受け入れ、ビール造りを学べる場にしたい。現状ではビール醸造を学べる所がないため、業界では作り手が不足している。醸造を学べる大学は数カ所あるが、日本酒だけで、家庭でビールを造ることは酒税法の関係で禁止されている。ビール造りをしたければ、製造会社に入り、いきなりプロになるしかない。このため、身近な所で醸造経験を積める施設づくりを目指す。

 -今後の展望を。

 工場は22年夏ごろの醸造開始を目指している。場内に仕込み釜4個、発酵タンク10本を設置する計画で、年間最大300㎘を醸造できる。定番の4種類を通年で製造する。他に春夏秋冬の季節ごとの商品各2種類や、道東地域限定のビールの製造も考えている。

 クラフトビールは、製造法や醸造場によってそれぞれ味わいが全く違うことが魅力の一つ。味や香りなどの好みはもちろん、食事やそのときの気分に合わせた楽しみ方ができる。その特長を道東・鶴居村から発信し、文化として定着させたい。工場やインターネットでの販売に加え、地元の酒屋・飲食店に卸したい。村の名物の一つになることができればうれしい。

 今後は、販売や事務作業などにも人手が必要になることから、地元雇用や観光資源の創出に取り組む。

 ビール造りを担う人を育てる一方、働く人や研修に来た人のための住宅の整備は今後の課題と捉えている。いずれは寮などを設けたい。

(聞き手・坂本 健次郎)

 植竹大海(うえたけ・ひろみ)1985年、埼玉県鶴ケ島市生まれ。2008年に協同商事コエドブルワリーに入社。上富良野町の忽布古丹醸造やカナダ・トロントの醸造場などで経験を積む。21年1月にKnotを設立。

(北海道建設新聞021年10月20日付2面より)


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