深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り トリプルワン 伊藤翔太社長

2021年11月04日 12時00分

伊藤翔太社長

人の共感生む広告づくり

 「おもしろい!事しかしません。」をスローガンに掲げるトリプルワン(本社・札幌)は、映像製作や広告代理業、タレントマネジメントを事業の軸とするほか、企業のさまざまな課題解決にも取り組む会社だ。コロナ禍で苦しむ飲食業界などを支援してきた伊藤翔太社長(37)に、コロナ後の変化や新たな取り組みへの考えを聞いた。

 -主事業では何を手掛けているか。

 広告代理業ではテレビCMやウェブ、紙媒体などの広告をつくっている。商品をただ宣伝すればいい時代ではない。受け手の共感を生むストーリーづくり、「共感の設計」を意識している。

 -コロナ禍の影響は。

 自治体の紹介曲などを歌うバンドのハンバーガーボーイズや、歌手の金子智也といったタレントが所属しているが、ライブイベントの開催は難しくなった。反対にオンラインイベントが増えたこともあり、映像製作は忙しくなっている。

 -他にどんなプロジェクトに関わるか。

 道内のクライアントを中心に今は20のプロジェクトが並行している。

 昨年は札幌市の飲食店を支援するクラウドファンディングを企画し、出資者にはプレミアム付き食事券を発行した。市の出資も合わせると11億円のお金の流れをつくれて、当社の知名度も結果的に高まった。

 1月には札幌市の成人式が中止になったのを受け、約150万円を負担してオンライン成人式を開いた。2000発の花火を打ち上げて動画配信し、協賛企業の記念品を配った。成人たちは地域の財産だから会社としてやれることをやるという気持ちだった。

 -食品プロデュースも手掛ける狙いを。

 飲食業界が苦しむ中で名店の味を10年後の未来にも残したいと、サツドラホールディングス(本社・札幌)やアイビック食品(同)と「食の北海道遺産」を始めた。レトルトカレーやハンバーグの調味料などを現時点で2万個出荷している。

 -東京からUターンしたきっかけは。

 起業前は都内のユニバーサルミュージックに勤めていたが、2016年の33歳の誕生日に脳腫瘍で倒れてしまった。死の恐怖や自分が忘れられる寂しさを感じたことから、手掛けた仕事を世界に残したいと思うようになり、17年に札幌で起業した。

 -ビジネスの印象を。

 ここ数年でスタートアップが増え、支援環境も整ってきた。私と同世代で道外から帰ってきた人が活躍している。これを受け、他人の起業や地域課題解決を助ける会社の立ち上げを構想中だ。地域の人の手による課題解決が大切だし、ビジネスにもつながる。

 -アフターコロナの札幌をどう見据えるか。

 コロナ以前に戻ろうとしている人より、新しいことを始めようとしている人の方が明るい表情をしている。特に飲食や観光など苦しんだ業界は今までと形を変えて復活するのではないか。

 -トリプルワンとしての新しい取り組みは。

 南区に芸森スタジオという東京以北最大のレコーディングスタジオがあり宿泊ロッジも併設している。山下達郎ら有名アーティストの作品が生まれたこの場で製作合宿の誘致事業を検討中だ。札幌発の楽曲が世界に発信される未来を目指し、来年の会社立ち上げを計画している。他にも観光振興や運転代行アプリなど、思い付きも含めてやりたいことは多い。

(聞き手・高田 陸)

 伊藤翔太(いとう・しょうた)1983年11月生まれ、栗山町出身。大手音楽企業勤務を経て札幌にUターン、2017年7月に同社を立ち上げた。

(北海道建設新聞2021年10月25日付2面より)


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