人とたくさん接する営業
札幌を中心に不動産売買、賃貸仲介事業などを手掛ける札幌宅商(本社・札幌)は、1月に新社長となった船越弥一郎氏(45)の下、新たな体制でスタートした。コロナ禍や土地不足など不動産市況が変化する中、地域に根差した強みを生かしてどのように経営を展開するのか、船越社長に考えを聞いた。
―新体制で取り組むべきことは。
新たな経営理念として「地域密着宣言 始まりの予感」を掲げた。街のコンシェルジュになって、商店街や町内会と連携しながら地域の顧客が気軽に立ち寄れる店舗をつくりたい。土地や相続関係で悩んだ際、頼りになるための環境整備を進める。バブル崩壊やリーマンショック、東日本大震災などで、さまざまな不動産市況の変化を経験したが、会社が生き残るために必要なのは市況に左右されてはいけないということだ。
地域に根を張り、売買金額でなく成約件数にこだわって、たくさんの人と接する営業を展開していけば、顧客の紹介やリピーターにもなってくれる。この信念を曲げず、どんな市況でも耐えることができる不動産仲介会社を目指している。
―店舗を増やす考えはあるか。
計画はあり、札幌市内で場所を探している。近く決まるだろう。札幌宅商が50年を迎えたのは、仲介を原点に地元でさまざまなサービスを提供してきたからだ。今のところ札幌以外に出店する考えは持っていない。札幌で展開しながら仲介件数の拡大戦略を図る。
―コロナ禍の影響で経営に変化は。
昨年は春から半年ほどコロナ特需があった。札幌市内ではテレワークやリモートワークの導入が進み、広い住宅を求める人が急に増えた。中古分譲マンションの成約価格が上昇傾向にあるのがその証拠。今では地下鉄駅に近い物件は、高くて簡単に手が出せない。新築分譲マンションも高騰しているため、今度は建売住宅に目が向けられ、供給すれば飛ぶように売れた。
しかし、土地不足やウッドショックなどによる資材高騰の影響などで、ことしに入ってからは動きが鈍い。土地の仕入れが難しくなり、建て売りを供給したくてもできない現状がある。
賃貸は単純に古くなったから家賃を下げ、新築だからすぐに満室になるという時代でなくなった。1DKの広さ17m²で満足していた顧客が、コロナ禍のため30m²はないと借りてくれない状況になっている。中にはどこの建築士が設計したかを気にする人も一部でいた。コロナ禍により多様化しているニーズを捉え、適正な賃料で対応することが大事だ。
―不動産事業で注目している地区はあるか。
苫小牧に注目している。新千歳空港が近く、苫小牧港や高速道路もあり利便性がいい。2030年度には北海道新幹線札幌駅開業やJR札幌駅前周辺の大規模再開発などの効果で、北海道はますます発展するだろう。これに伴い物流手段として札幌に近い苫小牧港の船舶需要は高くなり、仕事を求めて人が集まると予測する。
既に港周辺の工業団地では仕事はあっても人手が足りないと聞く。長い目で見ると、賃貸住宅は確実に必要になる。将来を見越し、事業拡大の一環として戦略を練りたい。
(聞き手・武山 勝宣)