本間純子 いつもの暮らし便

 アリエルプラン・インテリア設計室の本間純子代表によるコラム。

 本間さんは札幌を拠点に活動するインテリアコーディネーターで、カラーユニバーサルデザインに造詣の深い人物。インテリアの域にとどまらず、建物の外装や街並みなど幅広く取り上げます。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第2木曜日に掲載しています)

本間純子 いつもの暮らし便(21)住宅の内装/色と素材感

2022年06月09日 09時00分

 インテリア産業協会の「高齢者のための照明・色彩計画」によると、私たちが日常で受け取る情報は視覚87%、聴覚7%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚1%とあります。視覚情報の約80%が色の情報といわれ、色彩は道路標識やサイン計画、商品デザインなどいろいろなところで重要な役割を担っています。

 インテリアでも色彩はとても重要です。壁紙の張り替えで空間のイメージが大きく変わることは、多くの方が経験するところです。人気のグレー系の床材や壁紙はシャープで都会的なイメージを作りますし、明るいブラウン系やベージュ系の内装仕上げ材でまとめるとソフトでナチュラルな印象になります。このように書くと「確かに、色彩は重要だね」という結論になりそうですが、実はちょっと違うのです。

 インテリアコーディネーターは、他のコーディネーターの仕事を見る機会は少なく、ましてプロの仕事を評価することは、まずありません。ある時、某ハウスメーカーから「このままでは売れないので、壁紙を張り替えたい」と相談があり、その建売住宅を見に行きました。他人の仕事に手を入れるのは、あまり気持ちの良いものではありません。でも建物に入って早々、担当者の言葉の意味に合点して問題点も見えてきました。並ぶ建物も同様で、図らずも壁紙のイメージ効果を再認識する機会となりました。

 学校などの大きな建物は「色の情報80%」の法則がほぼフィットします。壁に描かれた模様もしくは素材による凹凸は、離れて見るとはっきりせず単色の壁面に見えます。でも住宅の壁は比較的近いので柄や素材感がしっかり見え、色よりも強い印象を受けることがあります。

 住宅の内装仕上げ材はさまざまありますが、床は木質系フローリング、壁はビニルクロスが多く使われます。ビニルクロスは色も柄も素材感も豊富。織物、石目、左官、花柄、幾何学模様などイメージする壁紙を見つけられないことは、まずありません。

 さて「売れない」と言われた建物の壁紙ですが、柄や素材感の調整不足が原因と思われました。織物調の壁には織物調の天井を、石目の壁には石目の天井を組み合わせるのが基本です。織物調には柔らかな風合いがあり、石目からは固いイメージが伝わってきます。硬そうな石目と柔らかな織物調を組み合わせると、石目はより硬そうに感じます。ザラザラ感が強い石目は、さらにその差を感じさせます。私たちは本物に触った時の感覚を経験的に学んでいて、見た目がそっくりなビニルクロスにも同様の感覚を期待します。素材に対するこの感覚は変わりませんので、この建物では違和感となってしまったのです。

 住宅の内装仕上げ材はインテリアの基礎です。色だけでなく、素材感や柄から受ける印象も大切にしてコーディネートを進めたいものです。内装仕上げ材は簡単に交換できないので。


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