可能性眠るオンライン
大勢の観客が見守る中で、ビデオゲームの高度な技術を競うeスポーツ。海外では優勝賞金が数億円という大会も現れ、ゲームで生計を立てるプロ選手も珍しくない。北海道eスポーツ協会は、本道でeスポーツの普及に取り組む一般社団法人だ。専務理事を務める北海道新聞社企画室東京2020・スポーツ戦略本部の本間欽也部長に普及の現状を聞いた。
―協会のメンバーに有名企業が名を連ねる。
今の正会員は北海道ハイテクノロジー専門学校、北海道新聞社、電通北海道、凸版印刷の北海道事業部、レバンガ北海道の5社だ。各社は以前から、この分野の人材教育、イベントなどさまざまな取り組みを個別に進めていた。普及活動で力を合わせようと2019年2月に協会を発足した。
―レバンガはバスケットボールチームでは。
バスケットのほかにeスポーツ部門があり、プロゲーマーが何人も所属してチームをつくっている。人気カードゲームの国内大会で、18年の年間チャンピオンに輝いた実績もある。
バスケットもそうだが、プロスポーツは会場に観客を集め、場を盛り上げる多くのショー的な演出を凝らして、特別な雰囲気の中で技を競う。これはeスポーツの大会と構図がまったく同じで、レバンガにとってはバスケットの運営ノウハウを生かせる分野だ。
―協会の活動は。
昨年を通して、札幌市内を中心に競技イベントやシンポジウムを自主開催してきた。例えば4月にサッポロファクトリーのアトリウムで開いた「eスポーツフェスティバル」では、競技のほかにも初心者向け体験ブースを設け、プロからレクチャーを受けられるようにした。このときは一時的な競技観戦を含めて延べ数百人に足を止めてもらえた。
―自主開催以外は。
外部から委託を受けて、集客イベント会場などに体験コーナーを設置・運営している。また、全国的な競技会の北海道大会運営も受託する。道内の団体としては当協会のほか、日本eスポーツ連合(JeSU)の支部に当たる北海道eスポーツ連合があり、イベントによって連携している。
―全国的なイベントも増えているか。
昨年、国体の文化プログラムに初めてeスポーツが採用された。種目は「ぷよぷよ」など知名度の高い3タイトル。開催県の茨城で10月に決勝があり、北海道でも5月から8月にかけて商業施設などで予選をした。当協会は一部大会を受託運営させてもらった。
―競技人口は世界では1億人以上といわれるが、道内はどうか。
正確な統計はない。だが、札幌中心部にeスポーツ施設が2カ所あり、コロナウイルス問題の前まで連日にぎわっていたことから言えば、決して少なくないことが分かるだろう。ただ、日本ではプロが完全にゲームのみで生活できるほどには業界が発達していないため、外国と比べれば小規模かもしれない。
―コロナの影響は。
集客を前提としたイベントは中断しているが、世界を見るとオンラインの試みが出てきた。大坂なおみと錦織圭がリモートでプロテニス選手の大会に出場するなど、リアルのトップ選手が関わり始めている。サッカーでも同様の動きがある。
オンラインには多様な可能性がある。例えば体に障害のある人が、専用コントローラーを使って療養施設などからeスポーツ大会に参加することもできる。今回の事態を一つの機会として、協会として新しい取り組みにも挑戦したい。
(聞き手・吉村 慎司)
本間欽也(ほんま・きんや)1963年札幌市出身。大学卒業後、損害保険会社勤務を経て92年北海道新聞社入社。2010年販売局担当部長、16年マーケティングセンター部長、18年7月から現職。19年2月、北海道eスポーツ協会専務理事。
(北海道建設新聞2020年6月4日付2面より)