深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 竹栄 竹田尚弘社長

2021年12月07日 16時00分

竹田尚弘社長

問屋からマッチング業へ

 竹栄(本社・札幌)は創業93年の歴史を持つ衣料品卸会社ながら、インターネット小売りで売り上げの4割を計上するほか、オリジナルブランドの構築、無人店舗や撮影スタジオの運営、フードシェアサービスなど多様な挑戦に取り組んでいる。問屋からマッチング業を目指すという竹田尚弘社長(41)に展望を尋ねた。

 -ネット小売りはいつから始めたのか。

 2005年に楽天市場への出店を始め、私が立ち上げ直後から担当してきた。当初は紳士服を扱ったが、得意の子ども服にシフトして軌道に乗せられた。

 今では売り上げの4割がネット10店舗からだ。卸販売が減る中で会社全体の売り上げを15年前と同水準に保っているのは、ネット販売を早くから始めたことが大きい。

 -13年にはオリジナルブランド「yuk」(ユック)を扱い始めた。狙いは。

 他社の商品を扱い続けるだけで良いのかという懸念から、祖父の代で一度は撤退した商標を復活させ、ネットだけで扱い始めた。主に子ども用のスキーウエアやジャージーを中国の工場に製造委託している。

 本道の積雪寒冷環境に特化してはっ水加工や蓄熱裏地を取り入れるほか、ユーザーの声を基に雪風の侵入防止やネームタグの工夫など細かい改良を続けている。

 売れ行きは順調で昨シーズンはスキーウエアが1万5000枚も売れた。ここ数年で札幌スポーツ館やイオン北海道などの小売店でも並ぶようになった。

 -今後のブランド展開をどう見据えるか。

 道内企業ならではのブランドを確立したい。北海道や札幌市と商品ブランディングを共同検討し、「動ける寝袋」などテスト商品の打ち出しを来年に向けて構想している。中小企業庁のJAPANブランドへの申請も検討中で、海外展開を目指したい。流行に飛び付かず、子ども服と寒冷環境という当社の強みを生かす。

 -11月に開いた無人店舗の反響と取り組みの目指す先は。

 業界内外から好意的な関心を寄せられ、関東から視察に来た会社もある。300人の顧客に会員登録していただいた。

 ブランド発信の拠点という位置付けが目指す先の一つだ。無人店でありながら人とのつながりを感じられる店舗にしたい。顧客と一緒に店をつくる。

 実際に商品企画や店舗運営のアドバイスを数人からもらったほか、SDGsの観点で顧客から引き取った衣服を格安で売っている。今後は無人店舗の追加出店や、運営業務のパッケージ展開をしたい。

 -SDGsの観点からフードシェアサービスを手掛ける背景について。

 「プラスフード」は食品が余った店と利用者とをマッチングするサービスだ。小売店や飲食店の売れ残りを店で受け取れる。食品ロス削減を通じた地域への恩返しを目的に始めた。採算は度外視で取り組んでいる。

 -子ども向け撮影スタジオを運営するのは。

 モデル写真を撮る狙いもあって18年、一軒家貸し切りの「なないろのものがたり」を札幌で開いた。スタジオ利用が縁でモデルをお願いするようになったお子さんがいるなど、顧客とのつながりが生まれている。

 -多様な事業展開の根本にある考えは何か。

 コロナ禍の影響を受け、昨年から岩見沢や小樽などの実店舗4拠点を閉じている。環境の変化も踏まえ、当社の事業を「卸問屋」から「マッチング業」へと定義し直しているところだ。扱う物やサービスが変わっても、人や商品をつなげる役割を担いたい。

(聞き手・高田 陸)

 竹田尚弘(たけだ・なおひろ)1980年7月23日、小樽市生まれ。小樽市役所を経て20代半ばで家業の竹栄に入社。2020年11月から代表取締役社長。

(北海道建設新聞2021年11月30日付2面より)


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